山径独歩(やまみちひとりあるき)
2016年4月30日〜5月2日


「国土地理院発行の2万5千分の1地形図
(穂高岳)」

ルートタイム

1日目

1  上高地       10:30
2  明神池   11:30  〜  12:25
3  徳沢   13:10  〜  13:25
4  横尾山荘   14:15     

2日目

4  横尾山荘        06:50
5  蝶ヶ岳ヒュッテ   11:15  〜  13:30
6  蝶槍   14:00  〜  14:10
7  蝶ヶ岳ヒュッテ   14:40     

3日目

7  蝶ヶ岳ヒュッテ        05:35
8  長塀山   06:30  〜  06:40
9  徳沢   08:30  〜  08:50
10  上高地   10:25     
 北アルプス核心部の展望台といわれる蝶ヶ岳は一度登ってみたかった山だ。
 核心部の方はだいぶ歩き、地形もそこそこ頭に入ったため、外側からぜひ眺めてみたい。
 そう思って、今年のGWの春山は蝶ヶ岳に登ることに決めた。

 以前もGWに槍ヶ岳に登ったことがあったが、その時はそれほど混雑した記憶はない。だが今回、沢渡に車を駐めてバスに乗ろうとすると、バス停が長蛇の列である。
 仕方なくその列に並ぶが、来るバス来るバスがほぼ満員で、数人しか乗ることができない。
 横尾で一泊する計画にしておいて良かった。
 初日に蝶ヶ岳ヒュッテまで行く予定だったらとても明るいうちには到着できなかっただろう。
 小一時間ほど並んだ頃、やっと空のバスが来て一気に列が進み、どうやら私も乗り込むことができた。

1日目

 それでもどうやら10時には上高地に到着し、歩き始めたのが10時30分頃。天気は良く、好調な滑り出しだ。
 予定よりも若干スタートが遅れたが、今日は横尾まで、約3時間の平地歩き。のんびり行ってもおつりが来る。

 小一時間で明神に到着。いつもなら素通りするところだが、今日は時間があるので明神池を見学して行くことにする。
明神橋
穂高神社奥宮
 明神館の所を左折し、奥に入って行くと、梓川にかかる明神橋を渡る。橋越しに眺める明神岳が見事だ。
 橋を渡りさらに進むと、穂高神社奥宮に着く。明神池は穂高神社奥宮の境内になるらしく、拝観料を払って中に入る。
明神池
明神池
明神池
 中に入り、池を眺めて驚いた。まさに天然の日本庭園である。水も空気も素晴らしく澄み渡り、日本人がイメージする極楽浄土とはこんな所かと思うほどだ。
横尾
横尾
 だいぶ明神でのんびりしてしまったが、気を取り直して歩き出す。徳沢を過ぎた頃、それまで上天気だったのが急に雲がやってきてどんよりとなり、今にも落ちてきそうな空模様となった。
 いつものことだが、この時期は夏径が積雪で歩けないため、河原の車道を歩く。
 いまにも降りそうだが、今日の目的地の横尾まではもう一息だ。
横尾
 順調に歩き、午後2時過ぎに横尾山荘に到着。
 泊まりの申込をする。夕食は自炊にしようか迷ったが、自炊場はなく外になるとのこと。今にも降りそうな空模様でなので夕食も小屋に頼むことにする。
 案の定、荷物を置いて落ち着いた頃、しとしと雨が降り出した。
 横尾山荘は最近改装したばかりで、とてもきれいな小屋になっている。
 ベッドは2段ベット方式で、狭いながらも一人分のスペースがきちんと確保され、カーテンまでついている。

 しばらくのんびりしていると、風呂のアナウンスが入ったので行ってみる。特に急いだつもりもないのだが、いた場所が良かったのか、一番に脱衣所に入ると後から先を争って皆が入ってきた。
 服を脱ぐのに手間取っているうちに何人かが先に風呂場に飛び込んで行く。続いて入るとそれほど広くない湯船に交互に向かい合うように浸かっている。映画で見た刑務所の風呂のようだ。
 石けん等は使えないので、シャワーで汗と埃を流し、隙間を見つけて湯船へ。
 少々窮屈だが、それでもたっぷり汗をかいた後の風呂は気持ちがいい。

 風呂から上がってしばらくすると食事になり、いつものことだが食後は早々に寝てしまった。

2日目

 朝4時。快適な寝床でいつになくぐっすりと眠れ、気分の良い朝となったが、窓の外を見るとまだだいぶ降っているようだ。
 談話室でテレビの天気予報を見ると、もう少しで雨雲が通り抜けそうに見える。
 それなら少し待ってみようと、のんびりすることにした。今日の予定は蝶ヶ岳ヒュッテまで、5〜6時間の行程だから、それほど焦る必要はない。
 談話室で行動食を齧りながら漫画を読みつつ、時折テレビの雨雲レーダーをチェック。ところが抜けると思いきや、雨雲が停滞気味でなかなか抜けてくれない。他の宿泊客たちもテレビの前に群がり、出発のタイミングを考えていたが、明るくなり始めるとしびれを切らしたようにぽつりぽつりと出発し始めた。
 私も6時半頃まで待ったが、きりがないので、諦めて出発することにする。
横尾
蝶ヶ岳
 雨装備を整えて出発。雨足は強いが寒くはない。かなり蒸れそうな天候だ。
 思えば雨の中の登山も久しぶりだ。たまには雨も風情があって良いが、思った通り早くも蒸れて汗だくだ。
蝶ヶ岳
蝶ヶ岳
 しばらく登ると、「なんちゃって槍見台」と書かれた休憩ポイントに到着。だが、山の方は雲がかかり、何見えない。
 しばし休みながら眺めていると、一瞬だが雲が切れ、なんとか山影を望むことができた。
蝶ヶ岳
蝶ヶ岳
 さらに少し登ると雪が出てきたため、アイゼンを装着。
 だが、どうやら雨は止んだようだ。
 雨が止み、締まった雪の上を気持ちよく歩いて行くと、いつしか陽が射しはじめた。ずっと薄暗い曇天だったので雪の反射が目に痛い。慌ててサングラスをかける。
蝶ヶ岳
蝶ヶ岳
 天気が好転して気分が良くなったせいか、気がつくと稜線が見えている。本当にあっけないほどだ。
 もうすぐ待望の北アルプス全貌が眺められる。
 しかし天気が良かったのも束の間。あっという間に厚い雲に包まれ、稜線に到着した頃にはものすごい強風となった。
 左に行って蝶槍に登るつもりだったのだが、この天気では危険を感じ、早く蝶ヶ岳ヒュッテに逃げ込もうと右へ急ぐ。
蝶ヶ岳
蝶ヶ岳
 横風が叩き付ける稜線を一歩一歩歩き、避雷針と山名の案内盤がある所に到着。てっきりここが山頂かと思ったのだが、少し先を歩いていた登山者の人と話をするとどうやら違うらしい。
蝶ヶ岳
 見通しのない雲の中で話をしていたのだが、急にストーンと雲が晴れると、目の前に蝶ヶ岳ヒュッテがあった。
 なお、小屋の先に見えている小高い部分が蝶ヶ岳山頂だ。
 時刻は11時過ぎ。とりあえずヒュッテに飛び込み、時間は早いが宿泊の手続きをする。
 荷物を置いて一息つき、早速昼飯の準備にかかる。
 ここのヒュッテは入口の風除室が自炊場になっており、少々狭い。案の定、昼時にはだいぶ混んでいたので、早めに場所をとって正解だった。

 今日の昼飯は、初めて試す自衛隊の戦闘糧食。通称ミリメシだ。メニューはウインナーカレー。
 加温材が同梱されて火の要らないタイプもあるが、今回のものは加温材がないため、家で予めボイル済みである。
 そのままでも食べられるのだが、それではあまりにも冷たいので、カレーの方だけ再び温める。ご飯も温めたいのはやまやまなのだが、コッヘルに入らないので諦めた。
 とりあえず冷たいご飯に温めたカレーをかけ、食べ始めたが、最初はそこそこ美味しかったのだが、ご飯のあまりの冷たさにせっかく温めたカレーもすぐに冷え、あっという間に冷製カレーライスになってしまった。
 やはりご飯も入る大きめのコッヘルにするか、加温剤入りのものでないと美味しく食べることはできないようだ。
蝶ヶ岳
蝶ヶ岳
 食事も済み、のんびりしても時間はまだ13時半。退屈なので外に出てみる。
 相変わらず風は強いが、雲はだいぶ少なくなり、時折り薄日が差している。
 せっかくなので蝶槍まで往復することにした。
 さっきはまったく見えなかった北アルプスの核心部もうっすらとその姿を覗かせる。
蝶ヶ岳
蝶ヶ岳
 途中から蝶ヶ岳を振り返る。
 30分ほどで蝶槍に到着。
蝶ヶ岳
蝶ヶ岳
 蝶槍から眺める常念岳はなかなか美しい。また、常念岳に続く稜線の道も気持ちが良さそうだ。
 ふと見ると、槍沢の様子がだいぶ見えている。もうちょっとで槍ヶ岳も見えそうなのだが…。
蝶ヶ岳
 穂高をバックに記念撮影。
蝶ヶ岳
 改めて蝶ヶ岳山頂に登頂。
 夕方、また自炊場が混む前に夕食にし、のんびりしていたが、退屈してきたので少し早いが寝てしまう。

3日目

 相変わらず外は凄い風。低気圧のせいか軽い高山病になったようで、息苦しく、良く眠れない。
 夜半に一度起き出し、星を見ようと外に出てみるが、風が強いのに雲が多く、星空は望めないようだ。
 仕方がないのでまた寝苦しい寝床に戻る。
 それでもいくらかは眠ったようで、いつも通り4時に起床。やはり高山病か頭が痛いので、とりあえず頭痛薬を飲む。
 日の出は5時前とのことなので、身支度を整え、時刻に合わせて小屋を出る。
蝶ヶ岳
蝶ヶ岳
 幸いなことに、山側はすっかりと雲が取れ、北アルプスがその勇姿を現していた。
蝶ヶ岳
 薄暗いうちからすっかり明るくなるまで雄大な景色に見とれていたが、ぼちぼち下山にかかることにする。
 通り道になるので再び蝶ヶ岳山頂に登る。昨日はガスっていたが、小屋の向こうに表銀座方向がくっきりと美しい。
蝶ヶ岳
蝶ヶ岳
 下山は長塀山を経由して徳沢に降りる。遠くに乗鞍や木曽御嶽山を眺めながらのんびりと歩く。
 約1時間で長塀山山頂へ。ここはあまり展望は良くない。
 朝は完全装備で出立したのだが、陽が昇につれ、また下山するにつれてどんどんと暑くなり、徳沢に着く頃にはシャツ一枚になっていた。
 あとはひたすら梓川沿いを下り、上高地には10時30分頃に到着。午前中でまだ空いているバスに乗り込んで今回の山行の終了だ。

 今回はいつも山に持って行く18〜135mmの標準ズームしか持って行かなかったが、蝶ヶ岳に登る時は広角レンズがあると良い。あの雄大な連峰は18mmでは捉えきれず、歯がゆい思いをしたので、今度行く時にはぜひ10〜20mmの広角ズームを持って行きたい。蝶ヶ岳から常念岳の縦走も楽しそうだし…。
 夢がまた広がるなぁ。
山径独歩(やまみちひとりあるき)