2016年3月21〜22日

「国土地理院発行の2万5千分の1地形図
(木曽駒ヶ岳)」
ルートタイム
木曽駒ヶ岳と言えば、お花畑の広がる千畳敷カールが有名だが、冬は一転して大雪原が広がる絶景となる。
しかし、その千畳敷カールの登りは雪崩の巣ともいわれ、登山者が巻き込まれることも少なくないとのこと。
私はこれまで単独行ということもあり、ビーコンは持っていなかったのだが、今回はさすがにそうも言っておられず、急遽ビーコンを購入。いずれは講習を受けて捜索方法もマスターしなければならないが、今回はとりあえず自分が埋まったときのために発信モードだけは使えるようにする。つまり他人は助けられないが自分は助けて欲しいというなんとも虫のよい話であるが、そこは初回ということで勘弁してもらうことにして、とりあえず使ってみることにする。
1日目
初日はホテル千畳敷に泊まる予定なので、朝はのんびりと家を出発し、ちょうど昼頃に菅の台バスセンターに到着。ここから先はマイカー規制のため、バスで行くことになる。
菅の台バスセンターには大きな駐車場があるので、ここに車を駐める。さすがにこのシーズンはそれほど混んではいない。駐車場の隣には土産物屋があるので、そこで何か昼飯を食べようと思ったが、ちょうどいい食堂がなかったので、パンを買って車の中で食べる。
駐車場を走り回る野生の猿を眺めながらしばしくつろぐ。天気は上々で、車の窓を全開にしないと暑いほどだ。
頃合いを見計らって車を降り、バス停へ。
バスを降りると次はロープウェイだ。軽装の観光客がほとんどで、思ったよりも登山客の姿が少ない。
ロープウェイを降り、登山届けを出して外に出ると、そこは目も眩むような大雪原とそびえ立つ峰々。
この景色を眺めるためだけにでもロープウェイに乗ってくる価値があるというものだ。
明日登るルートを眺める。もう14時過ぎなので、下山してくる人たちが多い。おそらく日帰りなのだろうが、この時間では少々雪崩が心配だ。写真では見えにくいが、実は2週間ほど前に一度雪崩ており、その跡も生々しい。
しばらく景色を堪能してからホテル千畳敷にチェックイン。
一人で泊まるには申し訳ないような立派な部屋で、窓からは千畳敷カールが一望できる。
部屋でのんびりしているうちにいつしか陽も沈み、ほどなく食事の時間になる。
食後、明日の朝食の弁当とお湯をもらい、部屋に戻ると外はすっかり暗い。窓を開けてみると素晴らしい星空なので、早速カメラを持って外へ。
小型の携帯用三脚しか持って行かなかったため、雪の上に這いつくばるようにしてカメラをセットし、星空を撮影。安物のカメラと不十分な装備の割にはまあまあの出来だ。
ホテルの反対側にまわると、駒ヶ根の街の夜景が見事だ。
じっくりと撮影したかったが、あまり雪の上に寝転んでいては冷えて仕方がない。明日も早起きなので、適当に切り上げ、風呂に入って早々に布団に潜り込む。
2日目
4時に起床。とりあえずコーヒーを淹れ、夕べもらった朝食用の弁当を食べてから、身支度を整えて外に出ると、もうだいぶ東の空が焼け始めていた。
朝焼けを眺めながらアイゼンを装着し、いざ出発と思ったが、どうせなら日の出を待って出発することにする。
ほどなく素晴らしい御来光を拝むことができた。右はモルゲンロートに染まった宝剣岳。
さて、いよいよ出発だ。早朝に登るのは朝の清々しい山の空気を味わうためだが、今回は雪崩の危険を最大限に減らす意味もある。
カールの底から見上げるホテル千畳敷。
ここから浄土乗越までは一直線の登りだ。上に行くほど傾斜がきつくなる。
正面ルートの左側が雪崩の跡。
上に行くほど傾斜がきつくなって行く様子が、写真から感じていただけるだろうか。
ふと振り返るとホテル千畳敷から登ってきた道が見渡せる。これは雪崩の巣になる訳だ。
最後の急登を登り切り、浄土乗越へ。ここまで50分ほど。
この時期は営業していない宝剣山荘と天狗荘が見える。
ここまではまったくの無風だったが、浄土乗越に出たとたんに強風に襲われる。
風をいくらか避けられる建物の影で行動食を摂り、一息入れる。
天狗荘の先に見えるのが中岳だ。目的地の木曽駒ヶ岳は中岳の先になる。
風のせいなのだろうか、宝剣山荘の手前で雪が壁のように行く手を遮る。高さ5〜6mはあろうか。それを乗り越えて進む。
壁の上から振り返ってみる。人のいるあたりが浄土乗越だ。そこから右側に切れ落ちているところから登ってきたのである。
ふと見ると私の前を登っていたパーティが宝剣岳にアタックしようとしていた。
南岳を越えると、目的地の木曽駒ヶ岳がその姿を現す。手前に見えるのが半分雪に埋まった頂上山荘だ。
最後の急登が終わる頃、雪に埋まった社が見えた。
山頂の広場に出る。先の一番高いところが山頂だろうか。その向こうに見えるのは木曽御嶽山である。
山頂の標識も雪に埋もれている。
遠く北アルプスの全貌を望む。ズームしてみると、槍や穂高もはっきり見て取れる。
天気は上々、景色は最高で、山頂で少しのんびりしたかったが、風が強いので、早々に降りることにする。
駒ヶ岳を下り、南岳を登り返す。こちらから見ると、往路では山頂を通って来なかったことに気付き、改めて南岳山頂に向かう。
南岳山頂は岩の裏側にあった。これではさっき気付かなかったのも道理だ。
南岳を越えると目の前は宝剣岳だ。さっきのパーティが登頂していた。
宝剣岳にも登りたかったが、一人では少々不安だったので、今回は諦め、浄土乗越まで戻ってくる。
時刻はまだ8時30分。このまま下山するのはまだ早い。その先に見える小高いピークが美しいので、そこまで行ってみることにした。
それほど距離はないが、とても気持ちの良い稜線歩きだ。
ふと右を見ると、駒ヶ根の町の上にまるで水面のように薄い雲が張る。
浄土乗越から見えていた小高いピークに到着。稜線上でここが一番高そうなので、ここが伊那前岳だと思っていたのだが、実は伊那前岳は先に見える少し低いピークらしい。
伊那前岳は2,880mここは2,911m。このピークに名前がないのが不思議だ。
それにしてもこのピークからの展望は素晴らしい。千畳敷カールから宝剣岳、中岳から木曽駒ヶ岳までが一望に見渡せる。
しばらく景色を楽しみ、下山にかかる。再び浄土乗越まで戻り、千畳敷カールを下る。登るよりも下る方がスリリングだ。
雪崩が気になるので少し急ぎ気味に下り、30分ほどでホテルに戻る。
まだ時間は9時20分。ホテルではこれから登るパーティでごった返す中、装備を解いて早々にロープウェイに乗り込む。
今回はのんびりとホテルに一泊して登ったが、確かにこれなら日帰りでも充分行けそうだ。ぜひまた登りたい山である。