2013年12月20〜21日
「国土地理院発行の2万5千分の1地形図
(蓼科、蓼科山)」
3D MAP
ルートタイム
今シーズン最初の雪山として、どこを選ぶかいろいろと考えたのだが、比較的難易度が低いと言われる北八ヶ岳を選ぶことにした。
ルートについては、できれば車で行きたかったので、登山口と下山口を同じ場所にしたかったのだが、なかなか効率の良いルートが組めず、考えたあげく、北八ヶ岳ロープウェイを利用して、まず北横岳に登り、一旦戻ってきて、縞枯山荘に一泊。二日目は雨池峠から縞枯山、茶臼山の稜線伝いに南下して麦草峠へ。そこから白駒池をまわって渋の湯に下山する計画を立てた。
従って久しぶりに鉄道を利用しての山行となったのだが、どうも天気がはっきりしない。悩んだ末、大荒れになることはあるまいと、予定の2日前になってやっと決行を決心。
特急の切符を買い、縞枯山荘に予約の電話を入れると、宿泊予定の12/20は休業だと言うではないか。
今更日程の変更もできず、北横岳ヒュッテにあたると、こちらも休業。最後の頼みの綱と、麦草ヒュッテに電話をすると、こちらはOKとのこと。とりあえず予約をする。ルートは1日目が多少強行軍にはなるが、とりあえず予定通りとし、天候や積雪状況によっては北横岳はパスすることにした。
当日は茅野駅7:55の始バスに乗るため、前日の仕事を終えてその足で出発。新宿19:00発の特急あずさに乗り、21:30頃に茅野駅に到着。冷たい雨が降る中、予約しておいたビジネルホテルへ。
翌朝目が覚めると、雲はあるがそこそこ晴れ間も見える。
喜んでホテルを出て歩き出すと、昨日の雨が凍り、道は見事につるつるである。通学の高校生たちの手前、見るからに登山装備の私が転んではみっともないので、慎重に歩き、駅前のバス停へ。
予定通り始発のバスに乗る。このバスなら9:00の始発ロープウェイに間に合うはずだ。
最初は何人かいた乗客も皆途中で降り、後半の乗客は私一人となった。山に近づくにつれ、天気は悪くなり、いつしか雪が舞い始める。
それでもどうにか走っていたバスだったが、上り坂の途中で停止して進路を譲ったあと、とうとう登れなくなってしまった。運転手が降りてタイヤにチェーンを巻く。さすがに慣れているらしく、それほど待たずに作業を終えて走り出した。
9:05分頃、ロープウェイの駅に到着。始発には間に合わなかったが、次の9:20に乗り、山頂駅へ。
1日目
ロープウェイを降りてみると、けっこうな降り方である。ガスも濃く、これではトレースも消えて時間もかかりそうだし、北横岳に登っても展望は望めないだろうと考え、北横岳はパスすることにした。
深く考えずに麦草峠方面の標識に従って行ったら、山裾を通る五辻経由の道だった、慌てて戻る。
その途中でスキーの二人連れとすれ違う。彼らも麦草峠ヒュッテに泊まる予定とのことで、私は稜線の道から行くから、後で小屋で会いましょうと挨拶して、それぞれの道へ。
道を修正し、雨池峠方面へと進む。この辺はまだうっすらとスキーらしきトレースが残っており、歩きやすい。
ほどなく、縞枯山荘に到着。当初はここに泊まるつもりだったが、先述の通り、今日は休業。人気もなく、雪の舞う中の小屋はなんともうら淋しい。
縞枯山荘を過ぎると、まったくトレースがなくなった。ほぼ膝下までもぐる雪で、一歩一歩が非常に重くなる。スノーシューを持ってくれば良かったと後悔したが、後の祭り。
なんとか歩き続けていたが、あと20mほどで雨池峠の標識にたどり着くというところで、いきなり深みにはまった。
胸ほどまで雪に埋まり、もがきながら進路を変え、新雪の下のトレースを探すが、なかなか見つからない。
いよいよこれまでかと断念しかけたが、もがきにもがき、標識に向かって少しずつ進んでいくと、なんとか深みを脱することができた。
この先、こんなところが随所に出てくるようだと、かなりしんどいと思ったが、引き返すにしてもまだ時間に余裕はあるし、行けるところまで行ってやれと、縞枯山の登りに取り付く。
距離はそれほどでもないのだが、登るにつれ、だんだん傾斜がきつくなってくる。キックステップを使いつつ、一歩一歩登っていく。
縞枯山山頂に到着。
山頂は何もない単なる通過点のようだ。それでも稜線に上がったためだろう、急に風雪が強くなり、吹雪に近くなる。
一応、道を少し外れたところに展望台があるようだが、この天気ではどうせ何も見えないだろう。
ここで引き返そうかとも考えたが、ここまで来れたのなら何とか行けるだろうと楽観的に考え、先に進むことにする。
さて次の目標は茶臼山だが、稜線がつながっておらず、一度下ってまた登り直しだ。
距離もだいぶあるので、バテないよう、極力ペースに気を遣う。なにしろ、こんな吹雪の中でバテたら休むに休めず、往生すること必至だ。
それでも時には膝上まで潜る雪をラッセルしながら歩くのは、ゆっくり歩いても体力を消耗する。昼時は過ぎているが、のんびり食事をしている状況でもないので、立ったままチョコレートやカロリーメイトを齧りつつ、確実に距離を稼ぐよう努力する。
無我夢中で歩き、気がつくと茶臼山に到着。
茶臼山山頂は、目の前にぽかっと現れた広場だった。やはり、少し外れたところに展望台があるようだが、ここもスルーして先へ進む。
風雪はいよいよ強くなってくるが、ここまできたらもう引き返せない。もう、行程の半分は越えた。ひたすら前進するのみでだ。
今日最後のピークとなる中小場。
雪をかぶっているが、ここは岩場のようで、吹きさらしの場所のためかかなり吹き溜まりとなっている。
岩場に登るところでは雪に潜り、胸ほどの高さの段差ができてしまい、ストックを使って前の雪を掻き落し、膝で踏み固め、階段を作りながら一段一段登ってやっと岩場によじ登る。
岩場の上でも腰上まで雪に潜りながら泳ぐように歩を進め、反対側の下りにかかるまで、10mほどの距離をやっと通過する。
とにかくここから先はもう登りはない。ほっと一息ついて下りにかかる。
中小場を下り、大石峠に到着。麦草ヒュッテまではもう少しだ。暖かいストーブの前で熱いコーヒーを飲むことを想像しつつ、重い足を一歩一歩進めていく。
やっとのことで樹林帯を抜けると、広い場所に出た。
位置的には国道に出たようなのだが、どうも国道には見えない。どちらに進むべきか迷ったが、とりあえずこの広場を通り抜けてみようと歩き出すと、思い切り深みにはまった。じたばたしながらやっと這い上がる。とてもこの広場を横断するのは無理なようだ。
おそらく麦草ヒュッテはすぐ近くのはずなのだが、ここまで来て立ち往生では洒落にならない。
気を落ち着けて周りを見回すと、右手の方に木立が切れている箇所があることに気がついた。そちらの方角に足を踏み出してみると、新雪の下にどうやらトレースがあるらしく、それほど潜らない。よしとばかりに行ってみると、こんどは間違いなく国道だ。国道の標識がある。国道と言っても冬期は通行止めになり、除雪も全くされていない。その国道を横断し、麦草ヒュッテの看板を見つけたときの嬉しかったこと。
看板に従って入っていくと、ほどなく洒落た造りの麦草ヒュッテが見えてきた。
入り口でアイゼンを外し、ザックや体中についた雪を払って中に入る。薪ストーブで暖められた小屋の中はまるで極楽だ。スタッフの女性の出してくれたお茶を飲みながら、ストーブの前に腰を下ろし、安心感からしばしボーっとする。
落ち着いてからスタッフに案内してもらった部屋は、大部屋で、布団がざっと50組ほども並べてあったが、今日はこの部屋に3人とのこと。私と、あとの2人は途中で会った男女2人組だ。
部屋の一角には大きな本棚があり、なかなか興味深い本が揃っている。本を読みながら時間を過ごす。
夕飯時になり、さっきの薪ストーブがあるエントランスホールに行く。今回私は食事は頼んでおらず、自炊である。どうやら自炊は私1人のようだ。
食事を終えて部屋に戻り、しばらく本の続きを読んでいたが、だんだん寒くなり布団に潜る。すると今度は本を持つ手が冷えてくるので、少々時間は早いが、寝てしまうことにした。
2日目
今日は白駒池を経由して渋温泉に下る予定だ。
7時30分頃に出発するつもりで、6時頃に起き出す。だんだんと明るくなってくる外を眺めると、どうやら天気は良くなりそうな気配だ。このまま下山するのも惜しい気がしてきた。
同室の2人に今日の予定を聞くと、昨日来た道(彼らは五辻経由)を戻って北横岳に登る予定とのこと。北横岳は昨日登る予定をパスしてきたところなので、それを聞いて一気に気持ちが傾いた。
何かあるといけないので、さっき下山ルートを教えてもらったスタッフに予定の変更を伝え、ヒュッテを後にする。
ヒュッテを出て国道299号線、別名メルヘン街道を歩く。
雪に埋まった人気のない広い国道は、まるで人類滅亡後を描いた映画のようだ。
しばらく歩いていると、ヒュッテで一緒だった二人が追い抜いていった。彼らはスキーなので非常に速い。あっという間に姿が小さくなっていった。
雲が切れ、遠くの山並みが見えてくる。やはり天気は好転しそうだ。
スキーのトレースが国道からはずれ、山の中に入っている。どうやらここが五辻への分岐のようだ。
国道を外れて1時間ほど歩いた頃、四阿が現れる。
中を覗くと、それほど雪も吹き込んでいないようだ。中に入り、ベンチの雪を払って休憩にする。
ヒュッテを出発してから3時間ちょっとで昨日のスタート地点であるロープウェイ駅まで戻ってきた。
まだ空には雲が多いが、うっすらと薄日も射すほどに天候は好転してきている。
昨日はガスっていて見えなかったが、ロープウェイ駅前からは坪庭に登る斜面が見える。
駅前で少し休憩した後、北横岳に向かうことにする。
この坂を登れば坪庭だ。北横岳へは坪庭を通って行く。
坪庭を通り過ぎ、北横岳の登りにさしかかる。まったくトレースのなかった昨日と違い、ここはしっかりと踏まれており、歩きやすい。
いつしか雲が去り、抜けるような空が現れる。やはり雪山は晴れると気持ちがいい。
気持ちよく歩いているうちに、気がつくと北横岳ヒュッテが見えてきた。
ヒュッテの前のベンチに腰を下ろして一息入れる。時計を見るともう昼を過ぎているので、行動食で軽い昼食をとる。
北横岳の山頂まではもう一息だ。
ここから山頂までは、多少の急登がある。雪で見えないが、おそらく下は岩場なのだろう。もしかしたら鎖があるのかも知れない。この辺りまで来ると人が多いのに驚かされる。山頂直下の急登ではツアーらしい、見るからに雪慣れしていない団体が降りてくるのとすれ違う。道が狭く危険なので脇によけてやり過ごすが、ずいぶんと時間がかかってしまう。
北横岳の南峰に到着。山頂は意外と広い。
北横岳は北峰と南峰に分かれ、北峰の方が9mほど高い。数分の距離なので、南峰にザックをボラって行くことにする。
南峰と北峰の間の稜線。正面が北峰だ。
北横岳北峰に到着。ここが今回最後の目的地だ。
さっきとは逆に稜線を南峰に戻る。
山頂直下の急斜面を下る。
北横岳ヒュッテまで降りてくると、さっきすれ違ったツアーの団体をはじめ、他の団体も混じって大混雑している。
道が狭く、団体に巻き込まれると厄介なので、急いでヒュッテの前を通り抜ける。
その後も次から次へと登ってくる団体とすれ違う。人気があるとは聞いていたが、思っていた以上だ。
ほどよく踏み固められた道に気持ちよくアイゼンを立てながら快適に下り、あっという間に坪庭へ。登りときにはガスに隠れて見えなかった北横岳(写真左)や縞枯山(写真右)がその姿を現していた。
坪庭に降りてからロープウェイ山頂駅までのわずか10分ほどの間に、晴れていた空がみるみるうちに暗くなり、再び雪が舞い始めた。
下りのロープウェイを待つ間にアウターシェルを脱ぎ、アイゼン等もすっかりザックにしまって、帰り支度を整える。
ロープウェイに乗って山麓駅に降りると、下界はかなり激しい降り方だ。
当初の予定は、渋温泉に下山し、そこで風呂に入るつもりだったのが予定を変更したため、風呂はどうしようかと考えた。ダメ元で訪ねたが、ここには風呂はないとのこと。
風呂に入らずに電車で帰るのも気が引けたが、まあ夏よりはましだろうと思い、そのまま帰ることにした。
今回は天気が悪く、あまり展望が楽しめなかったのは残念だが、吹雪の中のラッセル等、貴重な体験をすることができた。いずれ、天気の良いときにまた来たいものである。