山径独歩(やまみちひとりあるき)
2015年10月3〜4日


「国土地理院発行の2万5千分の1地形図
(雲取山、丹波、武蔵日原、奥多摩湖)」

ルートタイム

1日目

1  鴨沢山の家       05:10
2  七ツ石小屋   09:15  〜  10:00
3  七ツ石山山頂   10:30  〜  10:40
4  小雲取山山頂   12:10     
5  雲取山山頂   12:40  〜  13:30
6  七ツ石小屋   15:10     

2日目

6  七ツ石小屋        05:35
7  高丸山   06:45  〜  07:00
8  日蔭名栗峰   07:30  〜  07:40
9  鷹ノ巣山避難小屋   08:05  〜  08:30
10  鷹ノ巣山山頂   09:05  〜  09:20
11  水根山山頂   09:35     
12  城山山頂   10:00  〜  10:15
13  六ツ石山山頂   11:05  〜  11:15
14  狩倉山山頂   11:30     
15  三ノ木戸山山頂   12:00  〜  12:10
16  奥多摩駅   14:00     
奥多摩はよく遊びに行っていた所だが、実は登山で訪れるのはこれが初めてである。
 以前車やバイクで行った時には渋滞にさんざん悩まされた記憶があったので、今回は電車で行くことにした。
 10/2は朝から登山スタイルで出勤。午前中で仕事を片付け、午後休みを取って電車に飛び乗る。
 ところが、事故があったとかで都内の電車のダイヤがメチャクチャに乱れているとのこと。テント装備の重い荷物を担いであっちこっちと遠回りをしながらやっと奥多摩駅に到着したのが午後5時過ぎ。
 駅のコインロッカーに帰りの着替えを預け、バス停に行くと鴨沢行きのバスが1時間先までない。20分後に出るバスは途中の深山橋から違う方向に行くのだが、深山橋から鴨沢まで2kmぐらいとのことなので、明日のウォーミングアップも兼ねて歩くことにした。今夜は鴨沢山の家という登山者専門の宿に予約を入れてある。
 バスの中では地元のおばあちゃんや運転手さんと会話しながら楽しく過ごし、深山橋で降りる時には皆に「気をつけて行ってね」と声をかけてもらう。まだ都内でもこんな雰囲気の場所があることに嬉しい驚きを感じ、曲がって行くバスを見送って歩き始めた。
 20分ほど歩くと鴨沢の集落に入る。目指す山の家はどこだろうと、探しながら歩いて行くと、古びた看板が目に入った。時刻は6時半頃。だいぶ薄暗くなってきている。
 ちょうど女将さんが外に出てきたので、予約の旨を話し、部屋に案内される。聞くと今日の客は私だけとのこと。古びてはいるが、掃除の行き届いたきれいな部屋だ。
 ここは食事のサービスはなく、素泊まりのみで1泊3,000円。自炊は自由にできるようになっているが、面倒なので駅前で買ったパンと行動食のナッツなどを食べて夕食にする。テレビもなく、置いてあった雑誌などを読んでいたが、疲れてきたので適当に寝てしまうことにした。

1日目

雲取山〜石尾根縦走・鴨沢山の家
雲取山〜石尾根縦走・鴨沢山の家
 朝4時に起床。行動食で朝食を摂り、荷物をまとめて5時過ぎに出発。まだ真っ暗である。ヘッドランプを点けて歩き出す。
 30分ほど歩くとだいぶ明るくなってきた。少しだが朝焼けも見えている。寂しいので熊避けにラジオを鳴らしながら歩く。
 小一時間ほど歩くと、前方がなにやら賑やかである。行ってみると、車がたくさん駐まっており、登山者が大勢いた。
 どうやらマイカー登山者はここまで入れるようだ。ここまで人っ子一人いなかった山径が一気に賑やかになる。
雲取山〜石尾根縦走・鴨沢山の家
雲取山〜石尾根縦走・鴨沢山の家
 駐車場から上は人も多いのだろう。道がよく踏まれているのがわかる。最近流行のトレランの人もずいぶん多い。
 最初の水場。やはり山で嬉しいのは水場だ。水筒の水を捨て、冷たい水を詰め替える。
雲取山〜七ツ石小屋
 思ったよりも時間がかかり、鴨沢から約4時間。9時過ぎに七ツ石小屋に到着。今日はここでテントをデポって雲取山を往復してくる予定だ。
 小屋番は物腰の柔らかい初老の男性。まだ時間は早いがテント泊の申込をしたいというと、今日は混むだろうから一番奥に張ってくれとのこと。
 あまり良い場所ではなかったが、小屋の裏の奥まった場所にテントを設営。とりあえず日帰り装備程度のみをザックに詰め直し、雲取山を目指して再び歩き始める。
雲取山〜七ツ石山
雲取山〜七ツ石山
 小屋から少し登ると辻があり、そこが水場になっている。そこから急な斜面を登って行くと、ほどなく石尾根に出る。石尾根を左に折れると15分ほどで七ツ石山山頂だ。
雲取山〜七ツ石小屋
 山頂の石に腰を下ろし、しばし休憩。正面には富士山が見えている。
雲取山〜石尾根縦走
雲取山〜石尾根縦走
 七ツ石山から急斜面を下り、ブナ坂を過ぎると見晴らしの良い稜線歩きになる。左手に富士山を眺めながらのんびりと歩く。
 なだらかな道をのんびりと歩いて行くと、ヘリポートがあり、その先に奥多摩小屋が現れる。その周辺にはテント場があり、先刻、七ツ石小屋の手前で挨拶したご夫婦がテントを設営していた。「お先に」と声をかけて先へ進む。
雲取山〜石尾根縦走・小雲取山
雲取山〜石尾根縦走
 奥多摩小屋を過ぎるとしばらく急登が続く。それに飽きてきた頃、小雲取山の辻に出る。
 小雲取山の辻を左に折れ、少し行くと、雲取山の避難小屋が見えてくる。
 ここから見ると、避難小屋の下は少々急な登りに見えるが、とりあえずしばらくはなだらかな道が続きそうだ。
雲取山〜石尾根縦走
雲取山〜石尾根縦走
 まるでのどかな山村の道といった風情で、登山をしていることを忘れそうだ。
 雲取山への最後の登り。遠目に見た時は急斜面に見えたが、近づいてみればそれほどでもない。
 上の避難小屋を過ぎれば山頂はすぐそこだ。
雲取山〜石尾根縦走
雲取山〜石尾根縦走
 避難小屋に到着。写真右下の赤茶色の屋根がトイレ。ここでトイレを借りてから山頂へ。
 避難小屋からは50mほどで山頂である。時刻は12時半を少し過ぎている。
 座りやすそうな岩を選んで腰を下ろす。かなり腹が減っていたので、インスタントラーメンを作って腹ごしらえ。食べ終わってコーヒーを飲んでいると、さっき奥多摩小屋のテント場でテントを設営していたご夫婦が登ってきた。
 彼らも食事をしながらいろいろと山談義に花が咲く。ご夫婦であちこち登られているようで、話を聞いているととても微笑ましい。
雲取山〜石尾根縦走
 あまりに天気が良く気持ちがいいのと、ご夫婦との会話が楽しくて、1時間近くものんびりしてしまった。
 ご夫婦に別れを告げ、下山にかかる。
雲取山〜石尾根縦走
雲取山〜石尾根縦走
 下りは足取りも軽く、七ツ石山直下のブナ坂まで到着。ここで少し迷った。
 来た道通りに七ツ石山山頂を通って行くと距離は短いが、けっこう長い急斜面を登らなければならない。もう一つの道は、山頂を迂回して斜面をトラバースする巻道だが、一見するとだいぶ遠回りに見える。
 どうしようか迷ったが、結局遠回りでも登りを迂回して巻き道を行くことにした。
 行ってみると、巻道はとても歩きやすく、雰囲気も良い。思ったほど距離も長くなく、気がついたら七ツ石小屋に到着していた。
雲取山〜石尾根縦走〜七ツ石小屋
 時刻は午後3時過ぎ。テント場に行くとやはりテントでいっぱいになっている。
 またずいぶんと詰めて立てたものだ。他のテントの間を縫って一番奥の自分のテントに入って行くと、隣にテントを張っていた3人の年配の女性が何故か凄い顔で睨みつけてくる。
 何か悪いことをしたかと思ったが特に思い当たることもなく、気分が悪かったがとりあえず「こんにちは」と声をかけると、プイと横を向かれた。
 こちらも腹が立ったのであえてそれ以上話しかけなかったが、なんだか良くわからない人たちだった。

 それにしても私のテントの入口にぴったりくっつけてテントを張られてしまったので、これでは出入りができない。
 むしろこちらが苦情を言いたいほどだったが、素直に人の話を聞く人たちとも思えず、仕方がないので、テントをぐるりと回して入口を裏側に向けた。それを見ていても何も言わない彼女たちにまた腹が立ったが、せっかくの楽しい山行なので、できるだけ考えないようにして無視することに決めた。
雲取山〜石尾根縦走〜七ツ石小屋
雲取山〜石尾根縦走〜七ツ石小屋
 小屋の裏にちょっとした台があったので、使わせてもらうことにした。少し小さいが、一人で食事をするには悪くない。
 食事をし、パイプを燻らせているうちにいつしか日が傾いてきた。
 しばし小屋のまわりの夕景を楽しんでいたが、すっかり暗くなり、することもないので早々にテントに潜り込む。
 この日は横田基地から米兵のツアーが来ていて、まだだいぶ賑やかだった。そこに小屋番の方も混じって山談義に花が咲いており、私などはテントの中で寝ながら楽しく耳を傾けていたのだが、ここでも隣のテントの三婆はテントの中から大声で苦情を言っていた。
 まだ午後7時過ぎ。苦情を言う時間ではないと思うのだが、どこまでも身勝手な人たちだ。

2日目

 朝4時に起床。テントのファスナーを開けて外を見るとまだ真っ暗である。
 とりあえずテントの中でラーメンを作って朝食にし、コーヒーを一杯。
 まわりもだいぶごそごそ始めているようだ。
雲取山〜石尾根縦走〜七ツ石小屋
雲取山〜石尾根縦走〜七ツ石小屋
 今日は石尾根を下って奥多摩駅まで行く予定だ。長丁場になるので、さっさと荷造りをして出発しようと思っていたのだが、朝焼けと雲海があまりにも見事だったので、ついつい時間を忘れて写真を撮ってしまった。
雲取山〜石尾根縦走〜七ツ石小屋
 5時には出発しようと思っていたのが5時半過ぎになり、急いで荷造りを終えて出発。
雲取山〜石尾根縦走
雲取山〜石尾根縦走
 小屋を出て20分ほど登ると石尾根に出る。石尾根を右に折れ、歩き始めた頃、朝日が射し始めた。
 こちらに来る人は少ないらしく、まったく人の気配がない。熊が怖くてまたラジオを鳴らしながら歩く。
 しばらく歩くと南側の木立が切れ、雲海の見事な眺望が目の前に広がった。
 あまりに見事でしばらくそこで見とれてしまう。
雲取山〜石尾根縦走〜高丸山
雲取山〜石尾根縦走〜高丸山
 1,704mピークを左に折れると、高丸山が見えてくる。距離はそれほどでもないが、なかなかきつそうな斜面だ。
 やはりきつい斜面を登り詰め、高丸山山頂へ。
雲取山〜石尾根縦走〜日蔭名栗峰
 高丸山から約30分。急斜面を下り、登り返すと次は日蔭名栗峰である。
 この石尾根は次々と山頂が現れるので、ピークハンティングには好都合だ。
 一応巻き道もあり、下山するだけならある程度楽に歩けるのだが、せっかくなのですべての山頂を通過して行く。
雲取山〜石尾根縦走〜鷹ノ巣山避難小屋
 日蔭名栗峰より下ること30分弱でコルに到達。そこには鷹ノ巣山避難小屋がある。
 ここで今日小屋を出てから初めて人に出会う。ここから少し下ると水場があるので、とりあえず水を汲みに行き、戻ってきて小屋前のベンチで休憩。
 後から荷物をここに置いて水場に行けば良かったと思ったがもう遅い。
 それにしても、雲取山といいここといい、この辺の避難小屋はどれも立派できれいだ。中を覗くと、数人分の荷物が置いてあった。おそらくここに泊まったのだろうが、荷物を置いてどこかに登りに行ったのだろうか。
雲取山〜石尾根縦走〜鷹ノ巣山
雲取山〜石尾根縦走〜鷹ノ巣山
 避難小屋からはまた急登が始まる。登るにつれてだんだんと尾根が細くなって行き、ちょっとした岩場のようになると山頂はもうすぐだ。
 鷹ノ巣山の山頂は広々とした気持ちの良い場所だ。
雲取山〜石尾根縦走〜鷹ノ巣山
雲取山〜石尾根縦走〜鷹ノ巣山
 山頂からの眺望も最高で、富士山の眺めが見事だ。
雲取山〜石尾根縦走〜鷹ノ巣山
雲取山〜石尾根縦走〜水根山
 景色に見とれてしばし休憩をしていると、後から団体が登ってきて一気に賑やかになったので腰を上げる。
 水根山は標識も何もなく、気をつけていないといつの間にか通り過ぎてしまう。
雲取山〜石尾根縦走〜城山
 城山山頂。水根山もそうだが、城山はさらにわからない。稜線の上のほんのわずかな盛り上がりであり、何故ここに山名が付いたのかも不思議だ。何か謂れがあるのだろうか。
 私はGPSを見て山頂がわかったが、そうでなければまず気付かないだろう。
 城山から少し行くと、将門馬場という名前のピークがあるが、ここは道から少し外れるため、無理に探さずに通り過ぎる。
 そこを過ぎると、しばらく木の根を足がかりに降りるような急傾斜となる。日当りが悪く、滑りやすいので注意が必要だ。
 傾斜が緩くなってほっとすると、六ツ石山の分岐に出る。ルートとしては真っすぐなのだが、せっかくなのでそこを左に折れ、六ツ石山山頂へ寄り道。
雲取山〜石尾根縦走〜六ツ石山
雲取山〜石尾根縦走〜六ツ石山
 分岐から5分ほど登ると山頂はもうすぐそこだ。
 六ツ石山の山頂はかなり広く、大勢が休憩できそうだが、眺望はあまり良くない。
 少しだけ休憩してすぐに登ってきた道を降りることにする。
雲取山〜石尾根縦走〜狩倉山
雲取山〜石尾根縦走〜三ノ木戸山
 稜線の分岐まで戻り、再び稜線を下山するとまもなく左に分岐する踏み跡が現れる。
 真っすぐ行けばそのまま下山できるのだが、左に行くと狩倉山山頂を経由して行ける。ここも寄って行くことにする。
 狩倉山山頂もまた何もない山頂である。写真の赤い杭が山頂なのだろうか。
 奥の木立の中には何やら研究設備のようなものがあるが、どこかの大学の研究フィールドのようだ。
 最後の山頂は三ノ木戸山だ。ここも注意していないと通り過ぎてしまうような目立たない踏み跡を入って行く。なだらかな長い山頂で、どこが山頂なのかまったくはっきりしない。ここもどうやら研究フィールドになっているらしく、いろいろな設備が設置してあった。
 三ノ木戸山からしばらく下ると車道に出るが、ここからがまた長く、複雑な道になる。そこここに奥多摩駅方面の案内表示があるので、それを見落とさないよう、右へ左とと歩き、奥多摩駅に到着したのが午後2時。
 コインロッカーに預けた着替えを出し、駅の近くの温泉で汗を流してさっぱり。後はのんびり電車に乗って帰るだけだ。

 ちなみに、今回は来る時も電車が遅れて苦労したが、帰りもまた電車が遅れ、殺人的な混み方になってしまった。テント装備の大型ザックが思いっきり顰蹙を買ったのは言うまでもない。
山径独歩(やまみちひとりあるき)