山径独歩(やまみちひとりあるき)
2013年1月4日


「国土地理院発行の2万5千分の1地形図
(車坂峠)」

ルートタイム

1  ビジターセンター駐車場       07:30
2  トーミの頭    09:15     
3  黒斑山   09:45  〜  10:15
4  蛇骨岳   10:40     
5  仙人岳   11:10     
6  ビジターセンター駐車場   13:40     

 黒斑山は標高こそ高いものの、起点となる車坂峠からの標高差が少なく、冬期でも登る人の多い比較的初心者向けの山である。
 黒斑山のみの往復なら3時間半〜4時間ぐらいの行程であり、トレースもしっかりとあり、悪天候さえ避ければ危険個所もほとんどない。
 上の地図を見ていただければ分かるが、黒斑山は浅間山第一外輪山の最高峰であり、稜線沿いには蛇骨岳、仙人岳、鋸岳などが連なっている。
 今回は、鋸岳まで行くことを最終目標とするが、時間や天候、雪の状況、トレースの状況などにより、行ける所まで行ってみようという計画を立てた。
 ちょうど正月でもあり、この日も大勢の登山客で賑わっていた。

 本題に入る前に、少し余談になるが、実は昨年の暮れ、12月29日に登る予定で、実際、私は29日の朝3時頃に家を出発した。
 登山口となる車坂峠近くのアサマ2000パークスキー場に車を駐めるつもりだったので、カーナビでスキー場を検索し、目的地登録をしていたのだが、ナビに従って目的地に到着すると、そこは何もない荒れ地の中であった。
 焦って再検索しても結果は同じ。それならばとスキー場の側のホテルで検索してもやはりその荒れ地の中を指定してしまう。
 どうやらナビのデータベースのバグらしい。
 慌てて現在地を確認すると目的地よりも西側から回り込んで、ずいぶん北に通り過ぎてしまっているようだ。
 ここから車坂峠に向かうには峠の反対側、つまり北側からアクセスするしかない。距離にして30km以上あるが、仕方がないのでその峠道に車を乗り入れた。
 だが、車坂峠は南側はスキー場のための除雪が行われているようだが、北側は行われていない。それでも私の車は四駆だし、轍がついていたので、とりあえず進んで見ることにした。
 ほどなく、轍もUターンした跡を最後に途絶えたが、それでも進んで行くと雪はだんだんと深くなり、これ以上の単独でのアタックは危険と判断し、戻ることにした。
 Uターンしようとしたが、道が狭い上、片側が崖なので、仕方なく、自分の轍を辿ってUターンできそうな場所までひたすらバック。1km近くバックしてやっとUターンに成功したが、この峠道が行けないとなると、来た道を高速道路まで戻るか、浅間山の東側を回って車坂峠を南から登るしかない。どちらにしても距離は60km以上あり、この調子では現地到着は昼近くになってしまうだろう。
 さすがに雪山を昼から登るのは無謀であり、泣く泣くそのまま帰って来たのであった。

 そのときに使用したナビはiPhoneのナビアプリで「全力案内」というもの。
 腹が立ったのでそれ以来このアプリは使用を中止し、現在はGoogle MapのiPhoneアプリを使用している。こちらは無料だが、ナビ機能も充実し、なかなか使い勝手が良い。

 そんなわけで、1月4日はリベンジとなったのだが、山頂まで行けなかったリベンジではなく、登山口までも辿り着けなかったリベンジというのだから情けない。
 かくして、今回は設定したナビを再確認し、予定通り5時30頃にスキー場に到着。
 できれば薄明るくなるころには出発したかったのだが、ひどい地吹雪なので、少し様子を見ながら朝食におにぎりを食べ、トイレを済ませて車に戻ると、いくらか風も弱まったようで、準備を始めることにした。
 夏山と違い、冬山は準備も大変だ。手がかじかんでもたもたしているうちに、あたりはすっかり明るくなり、結局6時50分頃に出発。
 車道を15分ほど登り返して車坂峠まで行くと、峠のビジターセンターの駐車場に登山客たちが車を駐めているようだ。これは情報不足だった。どうしようかと思ったが、帰りに楽をしたいという思いが勝ち、一旦スキー場に戻って車を移動させることにした。

 そんなことをしているうちに、結局登り始めたのは7時30分頃になってしまった。

 登山口はレストハウスから車道を渡って目の前だ。
 車道から1mぐらいの段差を登り、トレースに沿って歩き始める。
 20mほどで道が左右に分かれた。そこにいた登山客に聞いてみると、右が表コース、左が中コースといい、トーミの頭の下で合流するらしいが、表コースはトレースが少なく、かなり雪が深いらしい。
 今回は初めてでもあるし、無難な中コースで行くことにした。
黒斑山
黒斑山
 中コースは文字通り、樹林帯の中を行くコースである。
 連日、かなりの登山客があるらしく、トレースはしっかりと踏み固められており、アイゼンのみでも足がもぐることはない。
 樹林帯の中はそれほどでもないのだが、時折、ぽっかりとした広場に出ると、けっこう風が強い。
黒斑山
黒斑山
 トレースの上に目印のテープもしっかりとついているので、まず道に迷うことはないだろう。
 あまり展望のない樹林帯の道に飽き始めた頃、急に目の前が開けた。
 どうやら稜線に出たらしい。
黒斑山
黒斑山
 右側は展望が開けているが、残念ながら多少ガスがかかっている。
黒斑山
黒斑山
 やはり雪の稜線歩きは気持ちがよい。
 先の青いジャケットの人が立っている所がトーミの頭だ。
 さすがに風の強い稜線の木は凍り付き、樹氷となっている。
黒斑山
黒斑山
 トーミの頭に到着。ここで少し休憩と思ったが、かなり風が強く寒いので、そのまま先へと進む。
 途中、風のあたらない所で行動食を食べ、少々休憩しながら、30分ほどで黒斑山山頂に到着。
黒斑山
黒斑山
 山頂は背中に樹林帯を背負っているため、風が当たらない。
 ここから目の前に浅間山が拝めるはずなのだが、ガスが濃くて見えない。ガスの流れが速いので、しばらく途切れるのを待ってみたが、後から後からガスが流れて来て晴れそうにない。
 仕方がないので先に進むことにした。
黒斑山
黒斑山
 黒斑山山頂より再び木立の中に入り、少し下ると、すぐに木立から抜け出す。
 急斜面をトラバースしつつ、蛇骨岳へ向かう。
 エイリアンが出た。
黒斑山
黒斑山
 黒斑山から30分弱で蛇骨岳山頂に到着。ちょっと一服と思ったが、けっこう風が強く寒いので、立ち止まる気になれず、そのまま仙人岳に向かう。
黒斑山
黒斑山
 蛇骨岳より仙人岳方向を望む。それほど遠くないはずなのだが、ガスがかかってまったく見えない。
 蛇骨岳から雪の積もった急な岩場を降り、なだらかな稜線へ。ここで仙人岳から戻って来た登山者とすれ違う。写真は稜線から下って来た蛇骨岳を振り返ったところ。
黒斑山
黒斑山
 10分ほど平坦な稜線を歩いて行くと、仙人岳の登りにさしかかる。
 この辺りは北からの風が非常に強く、これまでとは比較にならないほど寒い。
 蛇骨岳から先はさすがに登山者も少ないようで、踏み後もわずかだ。
 強風に耐えながら少々急な登りを登る。雪面はほどよく固く、アイゼンの刃が心地よく食い込む。
 だがそれにしても寒い。髭につららが下がるのは毎度のことだが、それでも顔が寒いと思ったことはなかった。それが、ここでは顔が凍傷になると本気で心配になり、ネックウォーマーを顔に引き上げた。
 ほどなく、仙人岳山頂に到着したが、とてもじっとしてはいられない。鋸岳はガスで見えないが、どうやらトレースはないようだ。少し迷ったが、今回はここで引き返すことにする。
黒斑山
黒斑山
 仙人岳山頂より蛇骨岳を望む。
 仙人岳から稜線に降り、ふと振り返るとガスがいくらか薄れ、浅間山をうっすらと望むことができた。
黒斑山
黒斑山
 稜線を蛇骨岳に戻る。
 仙人岳を少し離れると、あれだけ強く吹いていた風がピタリと止まってしまう。
 急登の雪をやっとこさ登り、蛇骨岳へ。
黒斑山
黒斑山
 蛇骨岳より黒斑山へ。ここに来てだいぶガスが薄れ、天気が良くなって来た。
 陽が射して来たが気温は低いため、ダイヤモンドダストが空気中に美しくきらめく。
黒斑山
黒斑山
 黒斑山頂を通り過ぎ、トーミの頭へ。朝はガスが濃くてほとんど展望はなかったが、だいぶ展望が開け、気分が良い。
 ちょうど昼時でもあり、この辺りには大勢の登山客が休憩を取っていた。
黒斑山
黒斑山
 トーミの頭から黒斑山を望む。朝はガスが濃くて見えなかった景色だ。
 トーミの頭より稜線を下り、そのすぐ先から樹林帯に入る。
 あとは来た道を戻り、小一時間で車を駐めてあるビジターセンターへ。
 ビジターセンターで軽く食事でも、と思ったが、よく見ると冬期休業であった。
 今回失敗したのが、ペットボトルで持って行った水がすべて完全に凍ってしまったことである。
 500ccのペットボトルを3本持って行ったのだが、1本は歩きながら飲めるよう、保温カバーをつけてザックのショルダーベルトに吊るしていた。
 保温カバーとはいえ、口の部分は露出しているため、歩き出して1時間ほどで、口の部分に氷が詰まって水が出てこなくなった。それでも最初のうちはピッケルの先端で氷を割って飲んでいたのだが、仙人岳に着く頃には全体が凍り、どうにもならなくなった。
 ザックから新しいペットボトルを出してみたが、すべて完全に凍ってしまっている。
 バーナーは持って来ているので、いざとなれば雪を溶かして水を作ることは可能だが、止まると寒いし、それほどの距離でもないので、様子を見つつ下山してしまった。
 いずれは買おうとは思ってはいたが、やはり冬山は保温ボトルが必要だと実感した。
山径独歩(やまみちひとりあるき)