噴煙上げる活火山へ
2019年3月22日

「国土地理院発行の2万5千分の1地形図
(車坂峠・浅間山)」
ルートタイム
浅間山は長いこと登れない山だと思っていた。
確か2004年の噴火の後、だいぶ落ち着いてからだが、軽井沢でキャンプをしたことがあった。夜中に少し雨が降ったのだが、その雨に火山灰が混じり、テントも車もドロドロになって洗うのに苦労した記憶がある。
その後も小噴火を繰り返し、山域への立ち入り禁止などの話も聞いていたので、とにかく登れない山だと思っていたのだ。
それでも、あちこちの山から眺める浅間山は独特の美しい形状で、どこか憧れがあり、気になる山ではあったのだが、ネットで山の情報をいろいろと検索していときに、ふと、入山禁止が解除されていることを知り、一気に登山熱が高まった。
本当の山頂は未だ立ち入り禁止で、行けるのは第二外輪山の前掛山までとのことだが、それでも構わない。またいつ入山規制がかかるかわからないので、これはもう行くしかない。思い立ったが吉日だ。
登山口となる天狗温泉 浅間山荘の駐車場。ここは日帰り入浴もやっているので下山後は即入浴が可能だ。
ちなみに浅間山荘事件で有名なのはここではなく、まったく別の場所である。
入山届をポストに出し、歩き出すとすぐに川が現れる。鉄分の多い温泉なのだろう。川の色が赤い。
ほぼ同時に歩き始めた登山者。しばらくの間話しながらのんびりと歩く。
15分ほど歩くと土が消え、完全に雪山となった。自分はアイゼンを着けたかったので、彼には先に行ってもらう。一本道なのでまた会うだろう。
沢を渡るところで先ほどの登山者が写真を撮っていた。撮り方が堂に入っており、もしかしたらプロカメラマンかな? などと考えながら挨拶をして今度は自分が先行。
不動滝。もう少し早かったらきれいな氷瀑が見れたんだろうけど、残念ながらほとんど溶けていた。
だんだんと樹木が少なくなり、視界が開けてくる。目の前に見えるのは牙山か。
このあたりはトレースが不明瞭で少し迷う。右側に急な斜面があり、地図によればいずれこの斜面の上にあがるようなので、10mほどの斜面をよじ登る。写真は上った上から見下ろしたところ。
左側には浅間山第一外輪山の黒斑山が美しい。
天気は上々、最高の登山日和だ。
牙山の直下を通り抜けて振り返る。この角度の牙山はとても格好がいい。
このあたりに噴出口があるのか、ほのかに硫黄臭が漂っている。
休んでいると、先ほどの登山者が追いついてきた。デッキで話をすると、実は地元新聞の記者とのことで、浅間山の特集を担当しているとのこと。カメラの扱いが素人離れしていたのも納得だ。
ほどなく、火山館に到着。中で休憩もできるようだが、天気も良いし、寒くないので、アイゼンを外してデッキで休憩。
火山館から先は、しばらくの間平坦な道が続く。しかし、この辺りは吹き溜まりで踏み吹きが多く、なかなか歩きにくい。記者さんは流石に慣れているようで、ワカンをつけていたが、それでもだいぶ踏み抜いていた。
広場を抜けて再び樹林帯に入ると、踏み抜きはだいぶ少なくなる。
Jバンドへの分岐。さすがにJバンド方向へのトレースは皆無。
樹林帯を抜けると、目の前に独特の形状をした浅間山がその異様を現す。
いよいよ山頂への急斜面に差し掛かる。斜面をまっすぐに登るのはとても無理な斜面で、斜めに斜面を登っていくため、だいぶ遠回りになる。
少し登ると障害物がなくなり、第一外輪山の全容が一望に眺められるようになる。
先行していたさっきの記者さんは山頂は目指さず、このあたりで写真を撮っているとのこと。登っている自分も撮影されたが、おそらくヘロヘロの姿が撮られたことだろう。新聞に載らないことを祈る(笑)。
第一外輪山の向こうに見えるのは四阿山だ。
斜めに登ってもかなりきつい斜面に加え、登るに連れて風が強まり、息を切らしながらやっと第二外輪山の稜線に到着。
先に見えるのが本当の浅間山山頂だが、そちらは立ち入り禁止のため、稜線を右に周り、第二外輪山の前掛山を目指す。
ちょうど稜線に上がったところに火山シェルターが2基設置されている。
シェルターを眺めながら一息ついたところで、いざ前掛山へ。
シェルターのあたりは風が弱かったが、第一外輪山の稜線に出るとこれまで以上の強風で、油断していると飛ばされそうなほどだ。
意外と近くに見えたが、強風のために思うように歩けず、30分近くかかってやっと山頂が迫ってきた。
前掛山山頂に到着。
山頂からの眺めはなかなかのもの。あれに見えるは八ヶ岳か。
少し霞んではいるが、遠く北アルプスもはっきりと見えていた。
もっと景色を楽しんでいたかったが、あまりにも風が強いので適当なところで切り上げて下山を始める。両線を下っていくとすぐにシェルターがまた見えてくる。
シェルターのあたりは地形の関係で風があまり来ないので、ちょうどいい岩に腰を下ろして行動食で腹ごしらえ。
半分ほど降ったところで山頂方向を見上げる。こうして見るととんでもない斜面だ。
ようやっときつい斜面を下り終え、フラットな雪原へ。
樹林帯を抜け、またもや踏み抜きに悩まされながら広場を進む。直径50cm以上もある大きな踏み抜き跡がいくつもあるところを見ると、どうやらワカンもあまり役には立っていなかったようだ。
火山館に到着すると、例の記者さんが中から出てきた。取材させてほしいというので、休憩しながらいろいろと話をする。我ながらあまりたいした話はできず、歯痒い。
火山館の中には彼の特集記事が掲載された新聞が何部か置いてあり、見せてもらったが流石にいい写真を撮っている。おそらく数え切れないほど登っているのだろう。
楽しく話しているうちに時間は過ぎ、気がつくともう15時30分。浅間山荘の日帰り入浴タイムが17時までなので、そろそろ腰を上げないと風呂に入り損ねてしまう。
記者さんに別れを告げ、少し急ぎ足で下山にかかる。火山館から1時間ちょっと、16時40分頃に浅間山荘に到着し、とりあえず車に荷物を置いて大急ぎで温泉に直行。赤く濁った火山の温泉で疲れを癒し、今回の山行の締め括りとなった。