2011年12月24日

「国土地理院発行の2万5千分の1地形図
(丸沼・男体山)」
ルートタイム
今年も楽しみにしていた雪山シーズンがやって来た。
今シーズン最初の雪山はどこにしようかといろいろ考えていたのだが、以前から気になっていた日光白根山に登ることにした。
この山は大きく分けて次の3つのルートがある。
A.東側の奥日光湯元から前白根を経由して登るルート。
B.北側の菅沼から座禅山を経由して登るルート。
C.西側の丸沼高原スキー場からゴンドラを利用して山頂駅から登るルート。
一度無雪期にAのルートを登ってみたいと思っていたのだが、Aのルートは距離が長く、積雪期には難易度が高い。
今回は積雪期の最もポピュラーなルートであるCのルートを登ることにした。
スキーシーズンでもあり、関越道が渋滞することを予想して朝の3時に自宅を出発。
ゴンドラが動き出すのが8時30分なので、余裕を持って7時30分頃には到着したいと考えたのだが、意外にも全く渋滞はなく、6時30分には丸沼高原スキー場に到着してしまった。
やはりスキーも下火なのだろうか。
今回、時間にこだわったのには理由がある。ゴンドラの運行時間が午後3時までなので、それまでに山頂駅に戻ってこないとゲレンデを4km歩いて下らなければならないのだ。
これはちょいと厄介なので、できるだけ出発時間を早めたかったのである。
車の中でスキー場のセンターハウスが開くのを待っていると、いつしか素晴らしい天気になってきた。
早く登りたくて体がうずうずする。
8時少し前頃だろうか、センターハウスが開き、駐車場から人が移動し始めた。早速私も荷物を担いでセンターハウスへ。
リフト券売り場に行き、「ゴンドラ1往復分」と言うと、「登山ですか? それなら入山届けを出してください。」と言われた。用紙をもらい、その場で記入する。
入山届けを出し、ゴンドラのチケットを買って準備はすっかり整った。
まだ多少時間があったので缶コーヒーを飲みながら最終の装備チェックをし、8時20分にゴンドラ乗り場へ。
既に気の早いスキーヤーやスノーボーダー十数人が並んでいる後ろに並び、ゴンドラが動き出すのを待つ。
ゴンドラは6人乗りで、リフトのように一定間隔で続けて来るが、速度はそれほど速くない。約15分ほどかかって山頂駅に到着した。
ゴンドラ山頂駅。
素晴らしい天気に皆歓声を上げていた。
あれが山頂だ。ずいぶん遠くに見えるが、3時までに戻って来られるだろうか。
山頂駅そばのレストハウスの裏手に回ると、シラビソの林の入り口に赤い鳥居が立っている。ここが登山道の入り口だ。
鳥居をくぐって100mほど行くと、立派な社殿があった。二荒山神社である。
ここで登山の無事を祈り、歩き出す。
積雪は50〜60cmほどだろうか。膝下ぐらいまでもぐる雪だが、道の真ん中はある程度踏み固められており、つぼ足で楽に歩ける。
折しもこの日はクリスマスイブ。樅の木ではないが、雪をかぶったシラビソはまるで天然のクリスマスツリーだ。そこへダイヤモンドダストがきらきらと舞う。
血の池地獄分岐を右に折れるといきなり急登が始まる。しかし距離は短く、まだつぼ足で登れそうだ。
急登が終わった頃、雪に埋まって寒そうな大日如来様が現れた。
雪の重みで枝が垂れ下がり、道を塞ぐ。
場所によっては四つん這いになって枝をくぐる所もあり、ザックにつけているピッケルが引っかかり、なかなか苦労した。
七色平分岐。ここを左に行くと避難小屋がある。もしもの時は心強い。山頂へは右へ。
七色平分岐を過ぎてしばらく行くと、大きな谷に出る。地獄ナギだ。斜面にそってぐるりと谷を回り込む。
ここへ来て、これまでしっかりとついていたトレースが消えており、膝あたりまで雪にもぐるようになった。
そろそろスノーシューの出番だと、ザックにくくりつけていたスノーシューを外し、靴に装着。
狭い場所でスノーシューと格闘していると、既にスノーシューを履いている後続の登山者が追い抜いていった。
やっとスノーシューを着けて歩き出す。
さすが文明の利器だ。さくさく歩けると喜んでいたのも束の間。すぐに急登が始まり、スノーシューはずるずると滑って登れなくなる。しかも雪はまた締まっている。どうやら吹き溜まりで一時的に深かっただけのようだ。
しかし、さっき抜いていった登山者は問題なく登っていったらしく、スノーシューの跡がしっかりとついている。
その足跡を見て納得した。
彼のスノーシューは全面に爪があり、ちょっとやそっとでは滑りそうにない。比べて私の安物スノーシューは靴の周辺に申し訳程度に爪があるだけだ。やはりちゃんとしたものを使わないとダメだなあと思ったが、仕方がない。
急登の途中でまた悪戦苦闘しながらスノーシューを外し、アイゼンに履き替える。
鬱蒼としたシラビソの森を抜け、ダケカンバの森に入る。
枝についた雪がレースのように美しい。
そろそろ森林限界に来たようだ。空が広くなる。
森林限界を抜けると山頂方面の斜面が一望に見渡せる。
さっき抜かれた登山者が歩いているのが見える。
このあたりはまだ夏道が見えているが、もう少し登ると雪に埋まり道が分からなくなる。
左側の雪の溜まったルンゼが目印だ。
ルンゼに沿って登って行くと、祠のある南峰に出る。
きつい斜面を登りながらふと横を見るとこの景色である。
バチが当たりそうなほどの良い天気だ。
ほどなく南峰に到着。
すぐ目の前に山頂が見えるが、山頂へは一度窪地に降りて、この岩を登り返さなければならない。
山頂に到着。
意外にも山頂には先客が7〜8人もおり、狭い山頂はずいぶん混雑していた。
やっと落ち着ける場所を見つけ、ザックをおろす。ちょうど昼時だったので昼飯にしてコーヒーでも湧かそうかと思ったが、風が強くずいぶんと寒いので、カロリーメイトをかじって昼飯代わりにする。
ペットボトルに1/3ほど残っていた水は凍ってしまい、出て来ないので、ザックの中の新しいボトルと取り替える。
南峰からルンゼに沿って下りながら眺める景色は最高だ。
眼下には箱庭のような凍てついた岩や木々。その向こうには遠くの山々までが一望に見渡せる。
この景色を見られただけでも来た甲斐があったというものだ。
景色を眺めながら調子良く下り、あっという間に森林限界まで降りてきてしまった。まだ午後1時前。十分ゴンドラの最終には間に合いそうだ。
ずいぶんのんびりと下ったつもりだが、やはり下りは速い。2時前にはゴンドラ山頂駅に到着することができた。
ふりかえると今登ってきた日光白根山がくっきりと見える。朝、この場所から見た時は逆行だったが、今は順光に映え、その勇姿をそびえさせている。
レストハウスの自販機で買ったスポーツドリンクを飲みながら、しばし見とれていた。