2012年4月28日

「国土地理院発行の2万5千分の1地形図
(水上・茂倉岳)」
ルートタイム
白毛門は湯檜曽川を挟んで谷川連邦と対峙する山だ。一ノ倉沢の岸壁の眺望が素晴らしいというので、それを楽しみに出かけることにした。
本当は4月の前半ぐらいに行くつもりだったのだが、休みになると天気が崩れる。せっかく眺望を楽しみに行くのだから好天の日に行きたいと思っているうちにとうとうゴールデンウィークになってしまった。
連休は道路が混むので避けたかったのだが、どうやら素晴らしい好天に恵まれそうなので、そこを押して出かけることにした。
渋滞を避けるため、金曜日の夜に家を出発。目論見通りスムーズに高速を走り、夜中の1時頃に土合駅に到着。駅前の広場に車を入れる。やはり同じことを考える人がいるようで、すでに駅前には数台の車が駐まっており、駅舎の中を覗くと数人がシュラフで寝ている。
少しの間星空を楽しんでから、私も車のシートを倒し、シュラフに潜り込んだ。
4時半頃に目を覚まし、外に出てみる。少々寒いが防寒着が必要なほどでもない。薄いウインドブレーカーを羽織って駅のトイレで用を足す。無人駅にしてはきれいなトイレである。
車に戻って軽く腹ごしらえをし、荷物を整えて歩き出す。
歩き出すと間もなく陽が射し始めた。
15分ほど車道を歩いて登山口へ。登山口の側に入山届けのポストがあったので、用紙に記入し、投函する。
すぐに橋を渡り、対岸の河原に降りると目の前は崖だ。よくわからず、崖を回り込んだが進めそうにない。戻ると後から来た3人連れのパーティーが崖を登っていた。よく見ると崖に道がついている。
崖の上に出ると、夏道が分かりづらい。木立の間を方角を定めて登って行く。けっこうな斜度である。
さきほどの3人と抜きつ抜かれつしながら木の根を手がかりに急斜面を登る。
だんだんと夏道がはっきりしてきて、迷うことはなくなった。
だんだん雪山らしくなってきた。もう少し早い時期だと雪庇があり、気をつけなければならない場所だ。
振り返ってみると、谷川岳方面が一望に見渡せる。
ブナの間の急斜面を一直線に登る。
一心に登っているといつしか木々もまばらになってきた。
それにしても急斜面が続く。
木立の間から一ノ倉沢の岩壁が見え隠れする。
振り返ると吸い込まれそうな斜面だ。
木立も途切れ、谷川岳から一ノ倉岳が一望にできる。実に圧巻である。
あいかわらずの急斜面だが、見晴らしも良くなり、気持ちのよい尾根歩きになってきた。
松ノ木沢ノ頭に到着。山頂が見えてきたが、ずいぶんと険しそうだ。
初めて見たが、あれがシジ岩とババ岩であることはすぐに分かった。まさに二つの岩が守る門である。
もう少し早い時期なら両岩の頭の上に雪が積もり、白毛のように見えるところから白毛門という名がついた訳だが、もう頭の雪は溶け、白毛ではなくなっていた。
ちょうど、最も傾斜のきつい箇所を先行者が二人歩いているのが見える。ゆっくりゆっくりと這うように進み、かなり厳しい斜面のようだ。
ふと振り返れば、後ろからも続々と登ってくる。さすがGWだけあって、結構登山者が多い。
いつしか最後の急斜面にさしかかる。どこかに45度以上あると書いてあったが、そのぐらいありそうだ。まだ朝の固い雪に爪先を蹴り込み、ピッケルを手がかりに這うように登る。アイゼンをつければよかったと思ったがもう遅い。先行者のトレースを足がかりにどうやら登っていく。
急登が終わるとほどなく山頂である。
周囲はまだだいぶ雪が残っているのに山頂の石標の周りだけは雪が溶けており、休むのに大変都合がいい。
石標に腰を下ろして休んでいると、後続の登山者が続々と到着。
山頂から見下ろすジジ岩とババ岩。上から見るとまだ少し白毛が残っているようだ。
山頂はかなり日射しが強く、暑いほどだが、雪に冷やされたそよ風が心地よい。
あまりにも気持ちがいいので、昼には早いが食事にすることにする。
まだ山頂付近の雪は汚れていないようなので、試しに手近な雪をコッヘルで掘り下げて、下の方の雪を口に入れてみる。
ほこりくさいようならやめようと思ったが、そうでもない。今回も雪を溶かして湯を沸かし、インスタントラーメンを茹でる。
食後のコーヒーを飲みながらのんびりとパイプを燻らしていると、あまりの心地よさに動く気がなくなりそうなほどだ。
まだ時間が早いので笠ヶ岳まで足を伸ばそうかとも思ったが、どんどん気温は上昇しており、夕べのニュースで雪崩注意報も出ていると聞いていたので、さっき登って来た急斜面が気になった。
これから笠ヶ岳を往復して下山すると、おそらく、午後の最も気温の高い時間に急斜面を下ることになるだろうと考え、迷った末、今回はこのまま下山することにした。
下りは来た道を戻るだけなので気は楽だ。さっきの急斜面を考えて下りはアイゼンをつけることにした。
思った通り朝は固かった斜面もこの気温でぐずぐずになっている。時折アイゼンも効かず、咄嗟にピッケルで停止する場面もあった。
それでも雪の上を歩いているうちはよかったのだが、中腹以降、雪がまばらになると、雪がどんどん溶けはじめ、道が小川になっている。急斜面でドロドロの道。雪なら滑って尻餅をついても大したことはないが、この泥ではあまり尻餅はつきたくない。雪の斜面よりも慎重に下ったせいか、久々に膝が笑い始めた。
昼近くなり、日差しはじりじりと照りつける。まるで夏山だが、時折そよぐ風が冷たく、天にも昇る心地がする。笑う膝をだましだまし下っているうちに、どうやら昼過ぎに下山。
驚いたことに、朝は20cmぐらい積もっていた登山口の駐車場の雪がきれいに溶けてなくなっていた。