2012年7月25〜27日

「国土地理院発行の2万5千分の1地形図
(水上)」
ルートタイム
谷川岳は以前から一度登ってみたかった山だ。この山は沢登りやロッククライミング、雪山と様々な魅力を持つ山だが、今回はごく普通に初秋のトレッキングを楽しむことにした。
谷川岳に登るには谷川岳ロープウェイの土合口駅からスタートするのがポピュラーなルートだが、ここから登るにもルートが3通りある。
まず、ロープウェイで天神平駅に登り、そこから歩くルート。これは最も初心者向けのルートである。
多少ロープを張ってある箇所もあるが、まったく使う必要もないほどだ。
それと、西黒尾根を登るルートと、厳剛新道の二つのルートだが、厳剛新道は途中で西黒尾根と合流する。
右の地図を見ていただければ分かりやすいと思うが、今回我々は厳剛新道から西黒尾根に登り、帰りは天神平に下ってロープウェイを使用するルートを計画した。
朝4時に車で自宅を出発し、6時30分頃に谷川岳ロープウェイの土合口駅に到着。
駅の立派な立体駐車場に車を駐める。時折小雨が落ちてくる空模様にもかかわらず、結構混んでいるようだ。後から後から車が入ってくる。
駐車場で準備を整え、いざ出発、と思ったが、出口が分からない。
ロープウェイに乗るならエレベーターに乗って上へ登れば良いのだが、外へ出られるのか分からなかったので、裏の車の入り口から出て建物をぐるりと回って道に戻る。正面に回ってみるとちゃんと正面玄関があった。考えてみれば当たり前か。余計な遠回りをしてしまった。
車で来た登山客の多くはロープウェイで登るようで、道路を歩いているのは上越線の土合駅から歩いて来た人たちのようだ。彼らに混じって車道を登る。
ロープウェイ駅のすぐ上からは一般車両は規制されており、車止めがある。そのすぐ先の登山指導センターで入山届けを提出。さらに先へ進む。
ほどなく西黒尾根の登山口にさしかかる。前後して歩いていた登山客は皆そこに入っていく。
もしかしてこっちの方が面白いのかな…と少々迷ったが、今回は予定通り厳剛新道を登ることにした。
厳剛新道の登山口へはまだしばらく車道を歩かなければならない。この車道歩きが面倒で西黒尾根を登る人が多いのかもしれない。
まだ相変わらずの小雨模様だが、雲は天候回復の兆しを見せ始めた。
途中、野生の猿の見送りを受けながら30分ほど歩いてやっと登山口に到着。
雨の直後で沢と化した小径を登る。
登り始めるとまたガスも出て来た。とんでもない湿度で、絶え間なく流れる汗とガスの湿気で服がびしょびしょになる。
登山口から45分ほどで第一見晴に到着。
沢登りをするらしいロープを担いだ夫婦が休憩していた。マチガ沢へはここから降りるらしい。
向かいに見えるマチガ沢ではすでに数人が登っていた。
第一見晴からは次々と岩場・鎖場が現れる。
晴れていればそれほど難しい岩場ではなさそうだが、今回は岩が濡れて滑りやすく、私も一度ヒヤリとした。
写真は今回も同行した次女。
途中、ガスを通して太陽が顔をのぞかせた。
手前の木々を幻想的に浮かび上がらせる。
西黒尾根の出会いに到着。第一見晴からそれほど距離はないにもかかわらず、ずいぶん時間がかかってしまった。やはり濡れた岩で慎重に登ったからだろう。
このあたりまでくるととりあえず雲を抜けたのか、展望はないが周囲にガスはなくなった。
ここからは先の道から山頂までを一望のもとに見渡せる。この辺りが森林限界で、ガスもなく、樹林帯を抜けて広々とした稜線はやはり気持ちがいい。
しかし、周囲にはまだ雲が多く展望がないのが残念だ。
ここからは西黒尾根の核心部となり、岩場や鎖場が連続する。
厳剛新道ではほとんど人に会うことはなかったが、西黒尾根に出るとけっこう登山客がいる。
岩場を抜けるとやせ尾根歩きとなる。天気がよければさぞかし展望がよく、空中散歩を楽しめそうだ。
先の方には山頂が雲の中に見え隠れしている。
ザンゲ岩にさしかかる頃、上空の雲が切れて太陽が顔をのぞかせた。時折やってくるそよ風が火照った体に心地よい。
ザンゲ岩を過ぎるとほどなく肩の広場に出る。もう山頂は目の前のはずなのにまったく見えない。
肩の広場では天神平からの登山客と合流するため、急に道が混みはじめた。
天神平からこれほどの人が登って来ているとは思わなかった。
先に見えているのがトマの耳。
谷川岳は双耳峰で手前のトマの耳は低い方の山頂だ。本当の山頂、オキの耳はもう少し先になる。
トマの耳山頂近辺はとにかく混んでおり、腰を下ろす場所もないほどだ。
オキの耳の方を眺めても山頂は雲の阻まれまったく見えないが、結構下って登り返すことだけは分かる。
トマの耳とオキの耳の間のコルからトマの耳を振り返る。
ありゃりゃ、あれをまた登り返すのか…。
オキの耳山頂。
山頂の杭と並んで写真を撮るのも順番待ちだ。
大混雑する山頂周辺でやっと場所を見つけ、昼食にする。
とりあえず湯を沸かし、次女はフリーズトライの山菜おこわを作る。私は今回汗をかきすぎたのか少々脱水症状気味で食欲がなく、インスタントのスープを飲む。これが辛めでとてもうまい。
持って来た水は二人で3リットル。この先も水場はなさそうなので節約しなければならない。私はカロリーメイトで昼飯にして、コーヒーを1杯だけ飲んだ。
狭い稜線上で食事をしながら眺めていると、時折目の前の雲が切れて展望が開ける。
これで雲がなかったらさぞかし圧巻だろう。
オキの耳からさらに少し先に鳥居が見える。
せっかくだからそこまで行って見た。鳥居には浅間神社・奥の院とあり、周辺の岩場からは絶景が望めそうだが、今日は雲が多すぎて残念。
仕方がないので引き返して肩の小屋へ向かうことにする。
鳥居越しに眺めるオキの耳。たいした距離ではないのだが、雲がかかっているせいでずいぶん遠くに見える。
オキの耳、トマの耳を登り返し、笹原につけられた道を辿って肩の小屋へ。
それにしてもすごい混雑だ。
家族連れの小学生ぐらいの男の子が、後ろから来る人みんなに「お先へどうぞ!」ととても礼儀正しく道を譲っているのが微笑ましい。
小屋の周辺は昼食を食べる人たちでごったがえしている。
トイレなどは100人以上は並んでいた。我々は幸いトイレは大丈夫だったが、緊急の人は大変だろう。
まだ水は残っているが、可能なら補給したいと思い、ダメもとで小屋の兄ちゃんに水場はあるか聞いてみたら、つっけんどんに「ない!」と言われた。
忙しいのも分かるが、もう少し言いようがありそうなものだ。
まあ後は下るだけなので、水は諦めて歩き出す。
あまり人がおらず、自分のペースで歩けた登りと違い、天神平への下りの人の多いこと。
ハイキング感覚で来る山慣れしていない人も多いので、後ろに並んでも道を譲らない人が多い。
時折出てくる鎖場などで人が溜まり、延々と渋滞の列が伸びる。時には10分も動かないことがあり、これにほとほと疲れてしまった。
結局、1時間ちょっとぐらいと思っていた天神平までの下りに2時間半かかり、ようやっと天神平へ。ロープウェイの駅に着くとドリンクの自販機にまっしぐら。脱水症状気味の体にしみ込む冷たいスポーツドリンクのうまいこと。
ロープウェイは待つのを覚悟していたが、かなり回転がよく、列の長さの割にはそれほど待たずに乗ることができた。
普段、人の多い山は苦手で避けて来たので、今回は人に疲れたというのが正直なところ。
そもそも楽をしようと下りに天神尾根へ下ったのが失敗だった。西黒尾根や厳剛新道はそれほど混まないので、そちらへ下れば良かったと思ったが後の祭り。
この時期でこれだけ混むようでは紅葉の時季はさぞ大変だろう。