2017年4月29日〜5月1日

「国土地理院発行の2万5千分の1地形図
(松原湖、蓼科、八ヶ岳西部)」
ルートタイム
思えば八ヶ岳は雪の姿しか知らない。
今回も春山だがまだ雪のたっぷりと残る八ヶ岳を訪れることにした。
今回は以前にも行ったことのある天狗岳から硫黄岳までを縦走し、前から行きたかった日本最高峰の露天風呂である本沢温泉の天上の湯に入ってから下山する計画だ。
以前、天狗岳に登った時は、西側の渋温泉からのアプローチだったが、今回は東側の稲子湯からのアプローチである。
1日目
稲子湯温泉に車を駐めさせてもらい、駐車料金を支払う。稲子湯温泉はどこかで見たことがあると思ったら、映画「岳」で谷村山荘のロケ地だったそうだ。帰ってからDVDを見返したら本当でした。
稲子湯温泉の庭先から登山道が始まる。
さすがにこのあたりはもう雪はない。
天気は良いが風が強い。誰もいない山の中で木立の軋む音が怖いほどだ。
1時間ほど登ると雪が出てきた。この辺りから上は完全に雪のようなので、アイゼンを装着。
しらびそ小屋に到着。ここで最初の休憩にする。
小屋の前にはみどり池があり、池越しに天狗岳が望める絶好のビューポイントだ。
小屋から少し歩くと、中山峠方向と夏沢峠方向の分岐が現れる。
しばらくはあまり起伏のない道をのんびりと歩くが、中山峠はほぼ崖であり、上りに差し掛かると急激に険しい登りとなる。
最後の登りは本当に急で、アイゼンとピッケルをフルに駆使しながらの登坂となる。ピッケルが2本欲しいと心から思った。
最も急な登りは100mほどだろうか。それほど長い距離ではないが、だいぶ時間がかかり、息を切らしながらようやく中山峠に到着。
最上部には写真のように少し鎖が見えており、無雪期は鎖場のようだが、この時期は鎖は雪の下だ。
中山峠で雪の上にひっくり返ってしばらく息を整えてから黒百合ヒュッテに向かう。
気がつくと雲がだいぶ厚くなってきており、いまにも降りそうな気配だ。
まあここからは2〜3分も歩けばヒュッテなので心配はない。
時間はまだお昼すぎ。少し早いが、ヒュッテに入ってのんびりすることにする。
心配した通り、ヒュッテに入って少ししたら雪が降り始め、そのうちに吹雪となった。
早めに到着してよかった。
2日目
4時頃に起きようと思っていたが寝過ごして4時20分頃に起床。
今日の行程はそれほど急ぐ必要はないが、本沢温泉の露天風呂「雲上の湯」に入りたいので、できれば陽の高い温かいうちに到着したいものだ。
とりあえず御来光が5時頃とのことなので、時間を見計らって中山峠の先の見晴らしへと向かう。
見晴らしからは今日歩く予定の天狗岳から硫黄岳がきれいに眺められる。手前が天狗岳、奥に見えるのが硫黄岳だ。
ほどなく御来光を拝むことができた。
少し雲があり、地平線からの御来光とはならなかったが、それでも美しい。
一旦ヒュッテに戻り、軽く腹ごしらえをして、6時に出立。今日は天気は上々だ。アウタージャケットは着たが、オーバーパンツは必要ないようだ。
清々しい朝の山歩きは本当に気分が良い。
歩いていると道脇の木立の中からなにやらガサガサと音がしている。
ふと見ると、大きなカモシカだ。
カモシカもこちらに気付き、しばらく警戒していたが、その後、道を横切って崖を少し下り、そこで立ち止まってまだこちらの様子を伺っているようだ。
どうやら食事を邪魔してしまったようで、写真だけ撮らせてもらってその場を去ることにする。
それにしても立派な美しいカモシカだったが、体が大きいだけに至近距離で見ると少々恐怖感もある。
風は強いが、天気は上々。それほど寒くもなく、最高の登山日和だ。
山頂直下の最も急な斜面を登る。
ピッケルがないと厳しい斜面だ。
東天狗岳山頂に到着。赤岳をバックにカッコつける。
来た道を振り返ると、北八ヶ岳から蓼科山まで一望に見渡せる。
ここは風が強いので、西天狗岳とのコルに降りて休憩することにする。
コルに降りると嘘のように風がなく、ポカポカ暖かい。しばし休憩した後、わずかな距離だが荷物をそこに置いて西天狗岳にアタック。
西天狗岳山頂に到着。
以前来た時は年末の時期でここの登りは吹き溜まりに悩まされたが、この時期はもう雪も締まっており、特に苦労することなく登頂。
東天狗岳を振り返る。
一旦東天狗岳まで戻り、さらにさらに稜線を南下。根石だけに向かう。
東天狗岳を振り返る。こちら側から見ると、横たわっている天狗の顔に見えるような気がする。これが天狗岳の名前の由来だろうか。
右寄りの一番手前のピークが根石岳。
根石岳とのコルまで降りて東西天狗岳を振り返る。
強風吹きすさぶ岩場を登り、根石岳山頂へ。山頂の岩陰で風をやり過ごしてしばし休憩。
山頂にいた年配の登山者と挨拶をしたが、すぐそばなのに大声を出さないと話ができないほどの風だ。
山頂から根石岳山荘を右に見ながら広い斜面を下る。
ここはまた一段と風が強い。いつでも耐風姿勢が取れるよう、ピッケルを構えながら下る。
この辺りで後ろから誰かを呼ぶような大きな声が聞こえた。振り返って見ると、一人の登山者が畳んだトレッキングポールを掲げてこちらに走ってくる。
最初は何だか分からなかったが、見覚えのあるトレッキングポールで、自分が落としたということがやっと飲み込めた。
ザックにくくりつけていたのが、いつの間にか外れて落ちたようだ。
強風の中、追いかけて来てくれた登山者にお礼を言って、トレッキングポールを受け取り、改めてしっかりとザックにくくりつける。
広い緩斜面から木立の登りに入ると、嘘のように風が収まり、雪の斜面を登りきると箕冠山山頂に到着。
この山頂はオーレン小屋との分岐にあたっており、平坦で山頂らしくない場所だ。
風もなく、歩きやすい緩斜面をのんびりと下る。正面には硫黄岳の勇姿。
夏沢峠に到着。狭い小屋の間を通り抜け、手頃な場所を見つけて休憩。
少し休んだ後、いざ硫黄岳の登りへ。ここはいきなり急斜面が始まり、山頂までほぼ続く。
登るにつれ、ダイナミックな噴火口が迫ってくる。この辺りも風がものすごい。
夏沢峠から1時間ちょっとで硫黄岳山頂へ。ここはとても広い山頂だが、とにかく風が強い。
ケルンの陰で風をやりすごしながらしばし息を整える。
振り返るとさっき通った天狗岳から蓼科山まで、北八ヶ岳が一望に見渡せる。
南側は八ヶ岳最高峰、赤岳の勇姿が目の前に。
ケルンの陰で風をやりすごしながらしばし息を整える。
火口壁に沿って道がついている。これは横岳の方に向かう道だろう。
もう少し山頂を楽しみたかったのだが、とにかく風が強く、とてものんびりできる状況ではないので、早々に下山を開始。夏沢峠に戻る。
ここからは右に折れ、本沢温泉へと向かうが、この下りは雪の腐り方がひどく、踏み抜きが多いのには手を焼いた。
それでも硫黄岳では寒かったのが、樹林帯を下っているうちに暑くなり、とうとうシャツ一枚で快適なほどになった。
露天風呂としては日本で最も標高の高い場所にある雲上の湯は、夏沢峠から下りていくと本沢温泉の手前に入口がある。
ここは有料で、本沢温泉で入湯料を払ってから入らなければならないのだが、また登り返してくるのも面倒だし、どうせ泊まるのだから後で申告すれば良いだろうと、先に入ってしまうことにする。
雲上の湯に行くとちょうど先客が一人上がったところで、「ずこくいい湯ですよ!」と太鼓判を押してくれたので、早速服を脱いで飛び込む。
ネットで見ていた情報では「ぬるくて寒い時はつらい」という話だったのだが、気温もそこそこ高かったせいか、熱すぎずぬるすぎず、本当に気持ちの良いお湯だ。
先客に写真を撮ってもらい、その後もずいぶんと長湯をしてしまった。
のんびりと露天風呂を担当し、5分ほど歩いて、今夜の宿、本沢温泉へ。
3日目
今日は稲子湯に下りるだけなので、それほど急ぐ必要はないのだが、午前中から天気が下り坂になるという予報なので、できれば降る前に降りてしまおうと早立ちをする。
といっても気分的にのんびりしてしまい、出発したのは6時30分頃になってしまった。
下るだけといっても、稲子湯方面へは尾根を一つ越えなければならず、多少の登りがある。
とはいえ、急ぐこともないので、のんびりと登山最終日を楽しむことにする。
歩いているうちに陽も登ってきた。朝日を浴びながらの雪山は本当に気持ちがいい。
平坦な歩きやすい森の中を気分良く歩いていると、あっという間に初日に別れた分岐点に戻って来た。
もう少し行けばしらびそ小屋なのでそこで冷たい飲み物でも買って休憩しようと、さらに足は軽くなる。
本当にあっけなく、しらびそ小屋に到着。
しらびそ小屋の前で休憩するために荷物を下ろそうとしていると、目の前をリスが走った。
小屋で冷たい飲み物を買い、休憩をしていると、ポツポツと雨か降り出したかと思うとすぐに本降りとなった。下山するまでもつかと思っていたが、予想よりも早い降り出しだ。慌ててアウターの上下を着る。
ここからはもう登って着た道を戻るだけなので、気は楽だ。
1時間ちょっとで下山。車を駐めている稲子湯温泉で風呂に入り、心地よい満足感とともに帰路につく。